今日のコピー 〜素人キャッチコピー論評〜

1日1個を目標に、心に響いたキャッチコピー・フレーズなど、自分なりに語ります。

ずるさとこわさとありがたさ 〜今日のフレーズ

抱きしめるふりして
抱きしめてもらってた
愛するふりして
愛してもらってた

(2011 【おあいこ】ハナレグミ ●PW:野田 洋次郎)
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久しぶりに、今日のフレーズ。
今日は、先日TVでやってた番組で知った曲より。

「ふりして」のフレーズが印象的ですね。
それだけ「甘えてた/依存してた」ということを
表現しているのだと自分は感じました。


「もらってた」には、感謝の想いが感じられます。

でも、全て過去形。

今は、そうではないということを暗に表している気がします。


ハナレグミ - おあいこ 【MUSIC VIDEO】

元プロサッカー選手の澤穂希さんの特集の際に使われていたこの曲。
曲自体の美しさと切なさ、それに上で挙げた歌詞部分だけを上手に演出させていたのが印象的でした。

そして、サッカー女子日本代表/なでしこの五輪出場が絶望的となってしまいました。
優勝したW杯以降、ずっとおなじみのメンバーが連ねていた今回のチームが見れるのはたぶん五輪で最後だろうと思っていただけに、早い感じの終幕が決定的となってしまったのは残念です。

彼女たちが、いちばん勝ちたいと思っていただろうし、
彼女たちが、いちばん負けて周りが去っていく怖さを知っていたのですから。
(どんどん背負うものが大きくなってく宮間選手も大丈夫かな)


無責任に浮かれていたのは、外野の私たちの方なのだと思います。

黒子を笑うな

幸福を笑うな


食事をおいしくするお茶がある


(2011 【烏龍茶】サントリー ●CW:安藤 隆)
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シンプルで強い主張が感じられるこのコピー。
睨む視線が印象的なビジュアルとも相まって、心に強く訴えかけてきます。
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(Photo from コピー年鑑2011)

ただ、このコピーが秀逸だなと思ったのは、このメインコピーは商品である「烏龍茶」のことを直接的には言っていないこと。

「烏龍茶」のことを言っているのは、メインではなくサブのコピー。

「幸福」は、「美味しい食事の時間」にあり、その主役にいるのはやはり「美味しいもの」だったり「一緒に食べる人との食事」だったりするのだと思うのです。
「美味しい食事をジャマしない/何にでも合う」烏龍茶は、あくまでつなぎ役/引き立て役に徹する。
でもそれこそが、いつでも誰にでも愛されるこの商品の価値を表しているのではないかなと。
そして、やっぱり本当に伝えたいのは「烏龍茶」が傍にあるときに人が普段出会う幸せだと思います。

グラフィックでも、印象的なメインビジュアルに負けないように、大きく自分を主張していますが、メインのジャマはしていない。やはり、ここでも黒子に徹している商品を上手に表していると思います。


立場が変われば、想いも変わる

主婦になると値段が気になる。
母親になると産地が気になる。


(2011 【フクロウの朝市】 ●CW:米田 恵子)
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男性の自分でも、思わず納得してしまうコピーです。

自分の役割/立ち位置が変われば、視界も変わる。
出てくる想いも変わる。

だからこそ、両方を納得させられる場がありますよという提案が説得力を持ってきます。

お母さんって大変だと改めて思ってしまいました。

月の始めにファイナリスト

通勤時間が20分短くなると、
年少30%UPと同じだけ幸福度があがる。
という調査結果があります。
つまり、
あなたの年収が500万円なら、
150万円もらえるようなものです。

【アットホーム/住み替えがしたくなるコピー】


揺れるだけなら、人は死なない。

【エヌ・シー・エヌ/「耐震の家」を伝えるコピー】



「この店好きね」と言われたら、
飽きてきたという意味です。

【カカクコム/「食べログ」ならどんなお店でも探せることが伝わるコピー】



知らない店は、知らない人が知っている。

【カカクコム/「食べログ」ならどんなお店でも探せることが伝わるコピー

 

人生で一番シェアするものは、
しょう油かもしれない。

キッコーマン/和食の魅力をあらためて広めるコピー】


上を向いた企業にしか、クラウドは見えない。

【FIXER/日本企業がクラウドを活用して飛躍するイメージを伝えるコピー】

(2015 【第53回宣伝会議賞ファイナリスト】)
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今回は、先日発表された「第53回宣伝会議賞」のファイナリスト(最終選考)に残った作品より、ぱっと見で自分に響いた作品(コピーのみ)をピックアップしてみました。

【アットホーム】
データをしっかりと見せたビジネスライクな書き方に、
何だか、一瞬アメリカのキャッチセールスの本にでも載っていそうな印象を一瞬想像しましたが、読むと効果があるようにすごく思えてきます。
最初の結果は、変換の単位が変わっているのに、それを同じ単位に置き換えただけで、こんなにも価値があることが感じられるんですね。
このデータもどこから探してきたのか…。秀逸です。

【エヌ・シー・エヌ】
見た瞬間、「やられた」と思ったコピー。
確かに、揺れるだけなら死なないんです。
揺れるだけなら……揺れるだけですから。
人の間に、物が介在しているから、建物が壊れたり、津波が来たり、原発が止まったりするわけです。
今回の場合は、耐震に強い家というのが課題テーマなので、津波原発は少し違うかもしれませんが。
地震と人の間にある部分を、しっかりと突いた素晴らしいコピーだと思いました。

【カカクコム】
カカクコムは2点ありました。

1点目は、何気ない恋人同士の会話を引っ張りだしていますが、解釈の仕方に「なるほどな」と
頷かされました。
そして、その奥にある彼女側の気持ちが、なんとも深いです。
相手と自分との温度差を鋭く描きながら「お店を探す行為」を想像させる。
やっぱり深いです。

もう1点は、当たり前のように見過ごされていることを突いたコピー。
誰でも思いつきそうなのに、思いつけない、こういうの。
こういうコピーをサラッと書けるようになりたいものです。

キッコーマン
和食の魅力を〜と課題テーマではなっていましたが、
結局、和食で一番使われる調味料は「しょう油」だという部分を訴求することで、キッコーマンの存在価値もしっかりと表現できています。
前回の同クライアントの金賞コピー
「世界にはまだ、しょうゆをかけるとおいしくなるものが、いっぱいあると思う。」
にも、通ずる世界の広がりがコピーから感じられます。
和食に「シェア」という英語の組み合わせも、新鮮で今風な空気感も感じられます。
和食で一番使われるといえば、味噌汁の「味噌」も思い浮かんだりもしましたが、しょう油の手渡しする感じが、人間味があって「シェア」という言葉に合っている気がします。
コピーを見た後、食卓の風景が、頭に浮かびました。

【FIXER】
課題のテーマにも見事に合致している「上を向く」という行為が、とても前向きに感じられます。
日本人だからかもしれませんが「上を向く(上を向いて歩こう)=悲しい」という印象を受けてしまいそうな捉え方を前向きに変換しているのも◎。
上を見ているからこそ、新しい技術(=クラウド)にも目を向けているべきという企業への訴求に加え、そういえば、上を見あげると、空には確かに「雲=クラウド」があるんですね。
視点・表現の巧みさに、感心してしまいました。

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今回は、色々紹介してみましたが、やはり良いコピーは、語るのに困らないですね。
勝手に、想像が膨らむ余地があるんですよね。
今回は、前回より、課題数が減って、応募数もやや少なくなったようですが、ファイナリストの数が多くて、質も高いものが多かった気がします。