いい毒を知るために
日本人に
もっと毒を。
汚い、といって電車のつり革に触らない人は、逆に不健康だと思う。
毒気など無縁の顔で理想ばかり語っていた政治家は、あっさりと折れてしまった。
お人好しがどれだけ罪かということを自覚しない国が、外交で失敗ばかりする。
毒とは何かを知らないコドモほど、人に平気で毒をかける。
あるいは自分にさえ毒をかけて、あっさりと死んでしまう。
あるいは「人に嫌われたくないから」という呪縛を自分にかけて、
少しずつ少しずつ、自殺しながら生きている。
いい毒は薬。毒に触れ、毒を知り、ある時はそれを解毒しながら、
ある時はそれを別の毒にぶつけながら、
人は自分の中に、やわらかで逞しい免疫力や想像力を育てていく。
とんでもなく悪いことをする人間は、ほとんどの場合、このふたつが決定的に書けている。
さてこれからの子どもたちはどういう風に
毒を知り、人間を、世の中を、世界を知っていくのだろうか。
突然ですが、立川談志さんのような人には、ずっと居つづけていてほしいと思う。
いい毒は薬。 宝島社の活字。
(2009 宝島社) ●CW:前田 知巳
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最近は、TVなどで「毒舌」がブームとなっているようですが、
それだけ、TVでも日常でも、「耳に痛いこと」を言える人が
少なくなっている時代なのだということでしょう。
でも、起こったあとで、なんだかんだという評論家よりも、
現実に厳しく警報を鳴らす人の方が、信頼できる気がします。
他人のためを思っているのなら、叱るのも愛、怒るのも愛。
もちろん、暴力はいけませんが。
そういう意味では、
このコピーも、愛に溢れた毒を言葉に込めている気がします。
最後を締めるコピーの中の「活字」が、
「活を入れる字」のように思えてきました。